近年、膨大な数のオープンデータが整備されてきましたが、地域政策に必要な情報がすべて揃っているわけではありません。オープンデータでは手に入らない情報を手に入れたい場合、アンケート調査を用いて情報を収集する必要があります。
アンケート調査は、住民満足度調査のように市民を対象にした政策評価と改善のための情報を収集するだけでなく、地域政策の方針や目標を立てる局面や、政策立案時においてもエビデンスの収集手段として役に立ちます。とくに、アンケート調査で得られた個票(ローデータ)は情報の宝庫であり、分析することで政策形成に必要なヒントが手に入ります。
アンケート調査はただ質問をすればよいというわけではありません。
当社は、以下のプロセスから、調査目的を具体的に定め、問題解決に至る道筋を論理的に整理することで、質問・回答の「コスト・パフォーマンス」を最大にするような調査を設計します。
調査結果を政策の意思決定や改善につなげるために、自治体との協議の上、調査目的を設定します。その際には、解決すべき問題から具体的な施策のヒントまで、テーマに沿ったロジックを重視します。
具体的な仮説を立て、質問に落とし込みます。その結果を分析することで、仮説の検証が可能になります。また、「これで何を知りたいのか」という回答者の心理的負担を軽減するためにも仮説の設定は必要です。
欧米の自治体は調査結果とともに調査の信頼性を住民に伝えているように、アンケート調査は信頼度が高いものでなければなりません。とくに、調査結果を公表する場合、信頼度が問われることもしばしばです。したがって、当社は調査の信頼度を高めるために以下の点を重視します。
①回答率(例:YES/NOと答えた人の割合)を求める調査と、②母集団の平均値(例:市の平均娯楽支出額)を求める調査では必要サンプル数が異なります。
アンケート調査について紹介する多くのウェブサイトでは、①のみが取り上げられることが多いのですが、当社は信頼度の高い調査を行うために、①と②の違いを考慮したサンプル数を算出します。なお、ネットモニターを対象とする場合など、サンプル回収に制限がある場合も工夫します。
例えば、子どものライフステージ(小学生や大学生)によって、子育て政策に対するニーズが異なる可能性があります。この場合、全ての子育て世帯から無作為にサンプルを回収すると、特定の年齢に偏ったりすることで、ニーズを把握できない可能性がでてきます。
当社では、類似したグループごとにサンプルを回収し、統計的な検定によってサンプルの偏りの有無を判断します。
一般論的な質問から具体的(詳細)な質問にするなど、質問の順番を考慮したり、アンケートの質問を適切な数にしたり、回答者が抵抗感を感じないように工夫します。
質問ごとに単純集計したり、回答者の属性とのクロス集計を行ったりでは政策情報は得られません。yes/noや順位といったデータの種類に応じた分析方法を用いて、政策立案に必要な情報(エビデンス)を収集します。
他にも方法がありますが、ここでは市民アンケート調査の分析に必要なものに限って示しています。
アンケートの回答のデータのタイプ (例:満足度、YES/NO) | アンケートの回答に影響する考えられる要因のデータのタイプ (年齢、居住区、アンケート調査における回答) | 分析方法 |
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定量的データ (例:満足度) | 定量的データ (例:年齢) | 重回帰分析 |
定量的データ (例:満足度) | 定量的データ (例:年齢) | プロビット分析 |
定量的データ (例:満足度) | 定性的データ (例:性別) | 数量化Ⅰ類 |
定性的データ (例:住み続けたいかどうか) | 定量データ (例:Ⅰ地域特性の分析で得られた得点) | 判別分析 |
分析結果を政策形成に活かすためには、市民や議会等で分かりやすく説明できるものでなくてはなりません。分析方法を見ると難しそうですが、分かりやすく解説します。
当社研究員の著書では社会調査の実施方法が掲載されています。
1. 政策形成におけるアンケートの位置づけ
2. アンケート調査票を作成する
3. サンプルサイズ(標本の大きさ)を決める
4. サンプルの偏りを分析する
5. アンケート調査結果を分析する