(Evidence based policy making)
エビデンス(科学的根拠)に基づく政策形成
欧米諸国では早くから実行され、政策形成に活かされており、日本でも近年、EBPMの必要性が指摘されるようになってきました。
しかし、多くの事務・事業が、イメージベースで網羅されるという実態は変わっていません。
EBPMは「政策形成にどのようなエビデンスが必要なのか」を適切に判断しなければなりません。政策形成に必要なエビデンスには、「現状分析のためのエビデンス」と「政策効果把握のためのエビデンス」とがありますが、現在は、「政策効果把握のエビデンス」が強調されすぎているようです。
的確な現状把握があってはじめて、政策効果のエビデンスが活きていきます。そして、的確な現状把握には、発生している課題に関しての専門的知識と物事を理論的にとらえる能力が求められます。
EBPMはデータを集め、加工し、分析すれば良いというわけではありません。
EBPMの目的は地域問題の解決に有効な戦略を立てることであって、データ収集と分析が目的になるのは本末転倒です。
対症療法ではない根本的な構造改革を実現するためには、問題発生の原因を探り、そこにメスを入れる必要があります。
エビデンスといえばデータ、とくに量的データを思い浮かべますが、政策形成に利用されるエビデンスにはいくつかの種類があります。データも量的なものだけでなく、誰が、何を、いつ、どこで、なぜといった質的データも政策形成には重要です。
その他にも、各種の委員会での参加者の発言、自治体職員の実践経験や実績等から得られる情報も重要ですし、論文や著書といった文献から得られる調査研究情報も政策形成に役立ちます。
注意しなければならないのは、EBPMに必要なエビデンスは、体系的なリサーチに基づいたエビデンス(RBE:Research Based Evidence)でなくてはならないということです。
イメージ通りで共有しやすいものであっても、リサーチに基づかないものはエビデンスではありません。
アンケート調査による一般市民の声も、それらが体系的なプロセスを通じて収集されており、十分な客観性を持つことが示されてはじめて「エビデンス」として利用できます。
以下の一連の政策形成プロセスやその各ステージにおいては、エビデンスが必要とされるシーンがしばしば出現します。
エビデンスが必要なステージは「+ Evidence」と表記しています。
現状を把握し、何がどのように問題なのかを明らかにしたうえで、どう変えたいのかを考え、次のステージに活用します。
政策効果を評価するためにも、目標は具体的で数値目標が必要です。ただし、目標によっては複数の施策が合わさって実現するものもあります。
効果的な政策立案するためには、問題を発生させている原因に応じて政策を絞り込むこと、加えて、政策の効果やコストなどを事前に予測しコストパフォーマンスを検証することが重要です。
重要成功要因から候補となった政策の効果を検証し、効果が大きい政策を選択します。効果検証には、実証プロジェクト型とエビデンスレビュー型があります。
事前評価は最善の政策手段を選択することを目的とするものであるのに対して、事後評価は政策のパフォーマンスを改善するための形成的評価(formative evaluation)に位置付けられるものです。
選択された政策を効率的な方法と体制で実施します。
監視は政策実行の一要素です。政策が初期の目標をどの程度達成しているかを把握しておくことで事後評価がしやすくなります。
最善の政策が選択されても、その後の環境変化やトラブルによって効果が十分ではない可能性があります。その場合、政策の見直しが必要です。